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謂うとき晩し、高峰が手にせるメスに片手を添えて、乳の下深く掻き切りぬ。
医学士は真蒼になりて戦きつつ、
「忘れません」
その声、その呼吸、その姿、その声、その呼吸、その姿。
伯爵夫人はうれしげに、いとあどけなき微笑を含みて高峰の手より手をはなし、ばったり、枕に伏すとぞ見えし、脣(くちびる)の色変わりたり。
そのときの二人が状、あたかも二人の身辺には、天なく、地なく、社会なく、全く人なきがごとくなりし。
下
数うれば、はや九年前なり。
高峰がそのころはまだ医科大学に学生なりしみぎりなりき。
一日予は渠(かれ)とともに、小石川なる植物園に散策しつ。
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