(322字。目安の読了時間:1分)
「どうぞ」と一言答えたる、夫人が蒼白なる両の頬(ほお)に刷けるがごとき紅を潮しつ。
じっと高峰を見詰めたるまま、胸に臨めるナイフにも眼を塞がんとはなさざりき。
と見れば雪の寒紅梅、血汐は胸よりつと流れて、さと白衣を染むるとともに、夫人の顔はもとのごとく、いと蒼白くなりけるが、はたせるかな自若として、足の指をも動かさざりき。
ことのここに及べるまで、医学士の挙動脱兎のごとく神速にしていささか間なく、伯爵夫人の胸を割くや、一同はもとよりかの医博士に到るまで、言を挟むべき寸隙とてもなかりしなるが、ここにおいてか、わななくあり、面を蔽うあり、背向になるあり、あるいは首を低るるあり、予のごとき、われを忘れて、ほとんど心臓まで寒くなりぬ。
\=========================
ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう!
http://bit.ly/2Ua60GN
■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv
■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.com
■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000050/files/360_19397.html
■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail
■月末まで一時的に配信を停止: https://forms.gle/d2gZZBtbeAEdXySW9
-------
配信元: ブンゴウメール編集部
NOT SO BAD, LLC.
Web: https://bungomail.com
配信停止:https://goo.gl/forms/kVz3fE9HdDq5iuA03