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この言をしてもし平生にあらしめば必ず一条の紛紜を惹(ひ)き起こすに相違なきも、病者に対して看護の地位に立てる者はなんらのこともこれを不問に帰せざるべからず。
しかもわが口よりして、あからさまに秘密ありて人に聞かしむることを得ずと、断乎として謂い出だせる、夫人の胸中を推すれば。
伯爵は温乎として、
「わしにも、聞かされぬことなんか。え、奥」
「はい。だれにも聞かすことはなりません」
夫人は決然たるものありき。
「何も痲酔剤を嗅いだからって、譫言を謂うという、極まったこともなさそうじゃの」
「いいえ、このくらい思っていれば、きっと謂いますに違いありません」
「そんな、また、無理を謂う」
「もう、御免くださいまし」
投げ棄つるがごとくかく謂いつつ、伯爵夫人は寝返りして、横に背かんとしたりしが、病める身のままならで、歯を鳴らす音聞こえたり。
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