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そのいたく落ち着きたる、これを頼もしと謂(い)わば謂え、伯爵夫人の爾(しか)き容体を見たる予が眼よりはむしろ心憎きばかりなりしなり。
おりからしとやかに戸を排して、静かにここに入り来たれるは、先刻に廊下にて行き逢いたりし三人の腰元の中に、ひときわ目立ちし婦人なり。
そと貴船伯に打ち向かいて、沈みたる音調もて、
「御前、姫様はようようお泣き止みあそばして、別室におとなしゅういらっしゃいます」
伯はものいわで頷(うなず)けり。
看護婦はわが医学士の前に進みて、
「それでは、あなた」
「よろしい」
と一言答えたる医学士の声は、このとき少しく震いを帯びてぞ予が耳には達したる。
その顔色はいかにしけん、にわかに少しく変わりたり。
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