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俺の心に憂鬱が完成するときにばかり、俺の心は和んでくる。
――おまえは腋(わき)の下を拭いているね。
冷汗が出るのか。
それは俺も同じことだ。
何もそれを不愉快がることはない。
べたべたとまるで精液のようだと思ってごらん。
それで俺達の憂鬱は完成するのだ。
ああ、桜の樹の下には屍体が埋まっている!
いったいどこから浮かんで来た空想かさっぱり見当のつかない屍体が、いまはまるで桜の樹と一つになって、どんなに頭を振っても離れてゆこうとはしない。
今こそ俺は、あの桜の樹の下で酒宴をひらいている村人たちと同じ権利で、花見の酒が呑(の)めそうな気がする。
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