ブンゴウメール
(551字。目安の読了時間:2分)
むろん、この堤の上を麦藁帽子とステッキ一本で散歩する自分たちをも。
七
自分といっしょに小金井の堤を散歩した朋友は、今は判官になって地方に行っているが、自分の前号の文を読んで次のごとくに書いて送ってきた。
自分は便利のためにこれをここに引用する必要を感ずる――武蔵野は俗にいう関八州の平野でもない。
また道灌が傘の代りに山吹の花を貰ったという歴史的の原でもない。
僕は自分で限界を定めた一種の武蔵野を有している。
その限界はあたかも国境または村境が山や河や、あるいは古跡や、いろいろのもので、定めらるるようにおのずから定められたもので、その定めは次のいろいろの考えから来る。
僕の武蔵野の範囲の中には東京がある。
しかしこれはむろん省かなくてはならぬ、なぜならば我々は農商務省の官衙が巍峨として聳えていたり、鉄管事件の裁判があったりする八百八街によって昔の面影を想像することができない。
それに僕が近ごろ知合いになったドイツ婦人の評に、東京は「新しい都」ということがあって、今日の光景ではたとえ徳川の江戸であったにしろ、この評語を適当と考えられる筋もある。
このようなわけで東京はかならず武蔵野から抹殺せねばならぬ。
しかしその市の尽くる処、すなわち町外ずれはかならず抹殺してはならぬ。
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