ブンゴウメール
(585字。目安の読了時間:2分)
はたして変だと驚いてはいけぬ。
その時農家で尋ねてみたまえ、門を出るとすぐ往来ですよと、すげなく答えるだろう。
農家の門を外に出てみるとはたして見覚えある往来、なるほどこれが近路だなと君は思わず微笑をもらす、その時初めて教えてくれた道のありがたさが解るだろう。
真直な路で両側とも十分に黄葉した林が四五丁も続く処に出ることがある。
この路を独り静かに歩むことのどんなに楽しかろう。
右側の林の頂は夕照鮮かにかがやいている。
おりおり落葉の音が聞こえるばかり、あたりはしんとしていかにも淋しい。
前にも後ろにも人影見えず、誰にも遇わず。
もしそれが木葉落ちつくしたころならば、路は落葉に埋れて、一足ごとにがさがさと音がする、林は奥まで見すかされ、梢の先は針のごとく細く蒼空を指している。
なおさら人に遇わない。
いよいよ淋しい。
落葉をふむ自分の足音ばかり高く、時に一羽の山鳩あわただしく飛び去る羽音に驚かされるばかり。
同じ路を引きかえして帰るは愚である。
迷ったところが今の武蔵野にすぎない、まさかに行暮れて困ることもあるまい。
帰りもやはりおよその方角をきめて、べつな路を当てもなく歩くが妙。
そうすると思わず落日の美観をうることがある。
日は富士の背に落ちんとしていまだまったく落ちず、富士の中腹に群がる雲は黄金色に染まって、見るがうちにさまざまの形に変ずる。
\=========================
ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう!
■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv
■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.com
■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404
■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000038/files/329_15886.html
■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail
メール配信の停止はこちら:https://goo.gl/forms/kVz3fE9HdDq5iuA03
-------
配信元: ブンゴウメール編集部
NOT SO BAD, LLC.
Mail: [email protected]