ブンゴウメール
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もし萱原のほうへ下りてゆくと、今まで見えた広い景色がことごとく隠れてしまって、小さな谷の底に出るだろう。
思いがけなく細長い池が萱原と林との間に隠れていたのを発見する。
水は清く澄んで、大空を横ぎる白雲の断片を鮮かに映している。
水のほとりには枯蘆がすこしばかり生えている。
この池のほとりの径をしばらくゆくとまた二つに分かれる。
右にゆけば林、左にゆけば坂。
君はかならず坂をのぼるだろう。
とかく武蔵野を散歩するのは高い処高い処と撰びたくなるのはなんとかして広い眺望を求むるからで、それでその望みは容易に達せられない。
見下ろすような眺望はけっしてできない。
それは初めからあきらめたがいい。
もし君、何かの必要で道を尋ねたく思わば、畑の真中にいる農夫にききたまえ。
農夫が四十以上の人であったら、大声をあげて尋ねてみたまえ、驚いてこちらを向き、大声で教えてくれるだろう。
もし少女であったら近づいて小声でききたまえ。
もし若者であったら、帽を取って慇懃に問いたまえ。
鷹揚に教えてくれるだろう。
怒ってはならない、これが東京近在の若者の癖であるから。
教えられた道をゆくと、道がまた二つに分かれる。
教えてくれたほうの道はあまりに小さくてすこし変だと思ってもそのとおりにゆきたまえ、突然農家の庭先に出るだろう。
はたして変だと驚いてはいけぬ。
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