ブンゴウメール
(431字。目安の読了時間:1分)
それだけ世の中がひらけたのである。
文明開化が進んだのである。
巳之助もまた日本のお国の人間なら、日本がこれだけ進んだことを喜んでいいはずなのだ。
古い自分のしょうばいが失われるからとて、世の中の進むのにじゃましようとしたり、何の怨みもない人を怨んで火をつけようとしたのは、男として何という見苦しいざまであったことか。
世の中が進んで、古いしょうばいがいらなくなれば、男らしく、すっぱりそのしょうばいは棄てて、世の中のためになる新しいしょうばいにかわろうじゃないか。
――
巳之助はすぐ家へとってかえした。
そしてそれからどうしたか。
寝ているおかみさんを起して、今家にあるすべてのランプに石油をつがせた。
おかみさんは、こんな夜更けに何をするつもりか巳之助にきいたが、巳之助は自分がこれからしようとしていることをきかせれば、おかみさんが止めるにきまっているので、黙っていた。
ランプは大小さまざまのがみなで五十ぐらいあった。
それにみな石油をついだ。
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