ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」の公式ブログです。

2019-09-25

老妓抄(25/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(546字。目安の読了時間:2分)

 みち子はついに何ものかを柚木から読み取った。

普段「男は案外臆病なものだ」と養母の言った言葉がふと思い出された。

 立派な一人前の男が、そんなことで臆病と戦っているのかと思うと、彼女は柚木が人のよい大きい家畜のように可愛ゆく思えて来た。

 彼女はばらばらになった顔の道具をたちまちまとめて、愛嬌したたるような媚びの笑顔に造り直した。

「ばか、そんなにしないだって、ご馳走あげるわよ」

 柚木の額の汗を掌でしゅっと払い捨ててやり

「こっちにあるから、いらっしゃいよ。さあね」

 ふと鳴って通った庭樹の青嵐を振返ってから、柚木のがっしりした腕を把った。

 さみだれが煙るように降る夕方、老妓は傘をさして、玄関横の柴折戸から庭へ入って来た。

渋い座敷着を着て、座敷へ上ってから、褄を下ろして坐った。

「お座敷の出がけだが、ちょっとあんたに云っとくことがあるので寄ったんだがね」

 莨入れを出して、煙管で煙草盆代りの西洋皿を引寄せて

「この頃、うちのみち子がしょっちゅう来るようだが、なに、それについて、とやかく云うんじゃないがね」

 若い者同志のことだから、もしやということも彼女は云った。

「そのもしやもだね」

 本当に性が合って、心の底から惚れ合うというのなら、それは自分も大賛成なのである。

\=========================

ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! 

http://bit.ly/2ZpucMy

■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv

■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.com

■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404

■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000076/files/447_19592.html

■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail

メール配信の停止はこちら:https://goo.gl/forms/kVz3fE9HdDq5iuA03

-------

配信元: ブンゴウメール編集部

NOT SO BAD, LLC.

Web: https://bungomail.com

Mail: [email protected]

公式サイト

ブンゴウメール

ブンゴウメール

1日3分のメールでムリせず毎月1冊本が読める、忙しいあなたのための読書サポートサービス

ブンゴウサーチ

ブンゴウサーチ

ブンゴウサーチは、青空文庫の作品を目安の読了時間で検索できるサービスです。