ブンゴウメール
(532字。目安の読了時間:2分)
名前は柚木といった。
快活で事もなげな青年で、家の中を見廻しながら「芸者屋にしちゃあ、三味線がないなあ」などと云った。
度々来ているうち、その事もなげな様子と、それから人の気先を[#「気先を」は底本では「気先は」]撥ね返す颯爽とした若い気分が、いつの間にか老妓の手頃な言葉仇となった。
「柚木君の仕事はチャチだね。一週間と保った試しはないぜ」彼女はこんな言葉を使うようになった。
「そりゃそうさ、こんなつまらない仕事は。パッションが起らないからねえ」
「パッションって何だい」
「パッションかい。ははは、そうさなあ、君たちの社会の言葉でいうなら、うん、そうだ、いろ気が起らないということだ」
ふと、老妓は自分の生涯に憐みの心が起った。
パッションとやらが起らずに、ほとんど生涯勤めて来た座敷の数々、相手の数々が思い泛べられた。
「ふむ。そうかい。じゃ、君、どういう仕事ならいろ気が起るんだい」
青年は発明をして、専売特許を取って、金を儲けることだといった。
「なら、早くそれをやればいいじゃないか」
柚木は老妓の顔を見上げたが
「やればいいじゃないかって、そう事が簡単に……(柚木はここで舌打をした)だから君たちは遊び女といわれるんだ」
「いやそうでないね。
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