ブンゴウメール
(584字。目安の読了時間:2分)
をかしなはがきが、ある土曜日の夕がた、一郎のうちにきました。
かねた一郎さま 九月十九日
あなたは、ごきげんよろしいほで、けつこです。
あした、めんどなさいばんしますから、おいで
んなさい。
とびどぐもたないでくなさい。
山ねこ 拝
こんなのです。
字はまるでへたで、墨もがさがさして指につくくらゐでした。
けれども一郎はうれしくてうれしくてたまりませんでした。
はがきをそつと学校のかばんにしまつて、うちぢゆうとんだりはねたりしました。
ね床にもぐつてからも、山猫のにやあとした顔や、そのめんだうだといふ裁判のけしきなどを考へて、おそくまでねむりませんでした。
けれども、一郎が眼をさましたときは、もうすつかり明るくなつてゐました。
おもてにでてみると、まはりの山は、みんなたつたいまできたばかりのやうにうるうるもりあがつて、まつ青なそらのしたにならんでゐました。
一郎はいそいでごはんをたべて、ひとり谷川に沿つたこみちを、かみの方へのぼつて行きました。
すきとほつた風がざあつと吹くと、栗の木はばらばらと実をおとしました。
一郎は栗の木をみあげて、
「栗の木、栗の木、やまねこがここを通らなかつたかい。」とききました。
栗の木はちよつとしづかになつて、
「やまねこなら、けさはやく、馬車でひがしの方へ飛んで行きましたよ。」
\=========================
ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう!
■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv
■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.com
■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404
■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/1925_17912.html
■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail
メール配信の停止はこちら:https://goo.gl/forms/kVz3fE9HdDq5iuA03
-------
配信元: ブンゴウメール編集部
NOT SO BAD, LLC.
Mail: [email protected]