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2019-08-07

オツベルと象(7/10) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(622字。目安の読了時間:2分)

 ある晩象は象小屋で、三把の藁をたべながら、十日の月を仰ぎ見て、

「苦しいです。サンタマリア。」と云ったということだ。

 こいつを聞いたオツベルは、ことごと象につらくした。

 ある晩、象は象小屋で、ふらふら倒れて地べたに座り、藁もたべずに、十一日の月を見て、

「もう、さようなら、サンタマリア。」と斯う言った。

「おや、何だって? さよならだ?」月が俄かに象に訊く。

「ええ、さよならです。サンタマリア。」

「何だい、なりばかり大きくて、からっきし意気地のないやつだなあ。仲間へ手紙を書いたらいいや。」月がわらって斯う云った。

「お筆も紙もありませんよう。」象は細ういきれいな声で、しくしくしくしく泣き出した。

「そら、これでしょう。」すぐ眼の前で、可愛い子どもの声がした。

象が頭を上げて見ると、赤い着物の童子が立って、硯と紙を捧げていた。

象は早速手紙を書いた。

「ぼくはずいぶん眼にあっている。みんなで出て来て助けてくれ。」

 童子はすぐに手紙をもって、林の方へあるいて行った。

 赤衣の童子が、そうして山に着いたのは、ちょうどひるめしごろだった。

このとき山の象どもは、沙羅樹の下のくらがりで、碁などをやっていたのだが、額をあつめてこれを見た。

「ぼくはずいぶん眼にあっている。みんなで出てきて助けてくれ。」

 象は一せいに立ちあがり、まっ黒になって吠えだした。

「オツベルをやっつけよう」議長の象が高く叫ぶと、

「おう、でかけよう。

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