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2019-07-21

三十年後の東京(21/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(505字。目安の読了時間:2分)

お母さんは一度心臓病で死にかけたんだけれど、人工心臓をつけていただいてこのとおり丈夫になったんですよ」

「人工心臓ですって」

「見えるでしょう。お母さんは背中に背嚢のようなものを背おっているでしょう。それが人工心臓なのよ」

 正吉は見た。

なるほど母親は、背中に妙な四角い箱を背おっている。

 それが人工心臓なのか。

正吉は目をぱちくり。

   口ひげのある弟

 人工心臓は、ほんとの心臓と違って、人間のつくった機械だから、ずっと大きい。

だから胸の中にはいらず背中にそれをくくりつけてある。

 胸の中から二本の管が出て、この人工心臓につながっている。

一方は赤くぬってあり、もう一つは青くぬってある。

赤い方は、きれいな血がとおる動脈、青い方は静脈だ。

そして人工心臓は、その血を体内に送ったり吸いこんだりするポンプなのである。

 昔あったジェラルミンよりもっと軽い金属材料と、すぐれた有機質の人造肉とでこしらえてあるのだと、専門のサクラ女史が説明してくれた。

「こんなものをぶら下げていると、かっこうが悪くてね。正吉や、お前が見ても、へんでしょう」

 と、母親は笑った。

 なつかしい母親の笑顔だった。

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