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2019-07-20

三十年後の東京(20/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(522字。目安の読了時間:2分)

地面の中にもぐっていて、青空が見えるはずがない」

 正吉は、うっかり思いまちがいしていたことに気がついて、顔があかくなった。

しかし、それほどほんものの秋空に見えるのだった。

 区長は、正吉を、りっぱな本屋につれこんだ。

奥は住宅になっていた。

いわゆるアパートメント式の住宅であった。

そのうちの一軒の前に立った区長は、扉をこつこつと叩いた。

すると中から返事があった。

女の声だった。

「あっ、あの声は……」

 扉が内にひらいた。

家の中から顔を出した白髪頭の老女があった。

「まあ、これは区長さん。それにサクラ先生に……」

「今日はめずらしい客人をお連れしました。ここにおられる少年に見おぼえがありますか」

 区長にいわれて、老女は正吉を見た。

「まあ、正吉ではありませんか。うちの正吉だ。まあまあ、正吉、お前はどうして……」

 老女は、正吉の母親であったのだ。

「お母さん」

 正吉と母親とは抱きあってうれしなみだにくれました。

「お母さん、よく長生きをしていてくれましたね」

「正吉や。お母さんは一度心臓病で死にかけたんだけれど、人工心臓をつけていただいてこのとおり丈夫になったんですよ」

「人工心臓ですって」

「見えるでしょう。

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