ブンゴウメール公式ブログ

青空文庫の作品を1ヶ月で読めるように毎日小分けでメール配信してくれるサービス「ブンゴウメール」の公式ブログです。

2019-06-09

猫町(9/16) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(735字。目安の読了時間:2分)

日本の諸国にあるこの種の部落的タブーは、おそらく風俗習慣を異にした外国の移住民や帰化人やを、先祖の氏神にもつ者の子孫であろう。

あるいは多分、もっと確実な推測として、切支丹宗徒の隠れた集合的部落であったのだろう。

しかし宇宙の間には、人間の知らない数々の秘密がある。

ホレーシオが言うように、理智は何事をも知りはしない。

理智はすべてを常識化し、神話に通俗の解説をする。

しかも宇宙の隠れた意味は、常に通俗以上である。

だからすべての哲学者は、彼らの窮理の最後に来て、いつも詩人の前に兜を脱いでる。

詩人の直覚する超常識の宇宙だけが、真のメタフィジックの実在なのだ。

 こうした思惟に耽りながら、私はひとり秋の山道を歩いていた。

その細い山道は、径路に沿うて林の奥へ消えて行った。

目的地への道標として、私が唯一のたよりにしていた汽車の軌道は、もはや何所にも見えなくなった。

私は道をなくしたのだ。

「迷い子!」

 瞑想から醒めた時に、私の心に浮んだのは、この心細い言葉であった。

私は急に不安になり、道を探そうとしてあわて出した。

私は後へ引返して、逆に最初の道へ戻ろうとした。

そして一層地理を失い、多岐に別れた迷路の中へ、ぬきさしならず入ってしまった。

山は次第に深くなり、小径は荊棘の中に消えてしまった。

空しい時間が経過して行き、一人の樵夫にも逢わなかった。

私はだんだん不安になり、犬のように焦燥しながら、道を嗅ぎ出そうとして歩き廻った。

そして最後に、漸く人馬の足跡のはっきりついた、一つの細い山道を発見した。

私はその足跡に注意しながら、次第に麓の方へ下って行った。

どっちの麓へ降りようとも、人家のある所へ着きさえすれば、とにかく安心ができるのである。

\=========================

ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! 

http://bit.ly/2JOpfEP

■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv

■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.com

■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404

■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000067/files/641_21647.html

■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail

メール配信の停止はこちら:https://goo.gl/forms/kVz3fE9HdDq5iuA03

-------

配信元: ブンゴウメール編集部

NOT SO BAD, LLC.

Web: https://bungomail.com

Mail: [email protected]

公式サイト

ブンゴウメール

ブンゴウメール

1日3分のメールでムリせず毎月1冊本が読める、忙しいあなたのための読書サポートサービス

ブンゴウサーチ

ブンゴウサーチ

ブンゴウサーチは、青空文庫の作品を目安の読了時間で検索できるサービスです。