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2019-05-24

犬を連れた奥さん(24/30) - ブンゴウメール

ブンゴウメール

(671字。目安の読了時間:2分)

と彼女は苦しそうに息をつきながら言った。

いまだに真っ蒼な、あっけにとられたような顔だった。

「ええ、ほんとに人をびっくりさせる方ですわ! わたし生きた心地もないくらい。何だって出掛けていらしたの? なぜですの?」

「でも察してください、アンナ、察して……」と彼は小声で、急きこんで言った。

「後生だから察して……」

 彼女は恐怖と哀願と愛情の入れまじった眼差しで彼を見つめた。

彼の面影をなるべくしっかり記憶に刻みつけようと、まじまじと見つめるのだった。

「わたしとても苦しんでいますの!」と彼女は、相手の言葉には耳をかさずにつづけた。

「わたしはしょっちゅうあなたの事ばかり考えていたの、あなたのことを考えるだけで生きていたの。そして、忘れよう忘れようと思っていたのに、あなたは何だって、何だってまた出掛けていらしったの?」

 少し上の踊り場で、中学生が二人煙草を吹かしながら見おろしていたが、グーロフにはそんなことはどうでもよく、アンナ・セルゲーヴナを自分の方へ引き寄せると、その顔や頬や手に接吻しはじめた。

「何をなさるの、何をなさるの!」彼女は男を押しのけながら、おびえ切って言うのだった。

「これじゃ二人とも狂気の沙汰ですわ。今日にもここを発ってちょうだい、今すぐこの足で発ってちょうだい。……神かけてのお願いですわ、後生ですわ。……ああ誰か来る!」

 階段の下の方から誰やらあがって来た。

「あなたはお発ちにならなきゃいけないのよ……」とアンナ・セルゲーヴナはひそひそ声でつづけた。

「ね、いいこと、ドミートリイ・ドミートリチ?

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