ブンゴウメール
(592字。目安の読了時間:2分)
「一人でなくちゃ、だめなんだ」
女は苦笑しました。
男は苦笑というものを始めて見ました。
そんな意地の悪い笑いを彼は今まで知らなかったのでした。
そしてそれを彼は「意地の悪い」という風には判断せずに、刀で斬っても斬れないように、と判断しました。
その証拠には、苦笑は彼の頭にハンを捺したように刻みつけられてしまったからです。
それは刀の刃のように思いだすたびにチクチク頭をきりました。
そして彼がそれを斬ることはできないのでした。
三日目がきました。
彼はひそかに出かけました。
桜の森は満開でした。
一足ふみこむとき、彼は女の苦笑を思いだしました。
それは今までに覚えのない鋭さで頭を斬りました。
それだけでもう彼は混乱していました。
花の下の冷めたさは涯のない四方からドッと押し寄せてきました。
彼の身体は忽ちその風に吹きさらされて透明になり、四方の風はゴウゴウと吹き通り、すでに風だけがはりつめているのでした。
彼の声のみが叫びました。
彼は走りました。
何という虚空でしょう。
彼は泣き、祈り、もがき、ただ逃げ去ろうとしていました。
そして、花の下をぬけだしたことが分ったとき、夢の中から我にかえった同じ気持を見出しました。
夢と違っていることは、本当に息も絶え絶えになっている身の苦しさでありました。
★
男と女とビッコの女は都に住みはじめました。
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