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しかもそれが、罪人の間に往々見受けるような、温順を装って権勢に媚(こ)びる態度ではない。
庄兵衛は不思議に思った。
そして舟に乗ってからも、単に役目の表で見張っているばかりでなく、絶えず喜助の挙動に、細かい注意をしていた。
その日は暮れ方から風がやんで、空一面をおおった薄い雲が、月の輪郭をかすませ、ようよう近寄って来る夏の温かさが、両岸の土からも、川床の土からも、もやになって立ちのぼるかと思われる夜であった。
下京の町を離れて、加茂川を横ぎったころからは、あたりがひっそりとして、ただ舳(へさき)にさかれる水のささやきを聞くのみである。
夜舟で寝ることは、罪人にも許されているのに、喜助は横になろうともせず、雲の濃淡に従って、光の増したり減じたりする月を仰いで、黙っている。
その額は晴れやかで目にはかすかなかがやきがある。
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