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そして年より夫婦に向って、
「昔から人魚は、不吉なものとしてある。今のうちに手許から離さないと、きっと悪いことがある」と、誠しやかに申したのであります。
年より夫婦は、ついに香具師の言うことを信じてしまいました。
それに大金になりますので、つい金に心を奪われて、娘を香具師に売ることに約束をきめてしまったのであります。
香具師は、大そう喜んで帰りました。
いずれそのうちに、娘を受取りに来ると言いました。
この話を娘が知った時どんなに驚いたでありましょう。
内気な、やさしい娘は、この家を離れて幾百里も遠い知らない熱い南の国に行くことを怖れました。
そして、泣いて、年より夫婦に願ったのであります。
「妾(わたし)は、どんなにも働きますから、どうぞ知らない南の国へ売られて行くことを許して下さいまし」と、言いました。
しかし、もはや、鬼のような心持になってしまった年より夫婦は何といっても娘の言うことを聞き入れませんでした。
娘は、室の裡(うち)に閉じこもって、一心に蝋燭の絵を描ていました。
しかし年より夫婦はそれを見ても、いじらしいとも哀れとも思わなかったのであります。
月の明るい晩のことであります。
娘は、独り波の音を聞きながら、身の行末を思うて悲しんでいました。
波の音を聞いていると、何となく遠くの方で、自分を呼んでいるものがあるような気がしましたので、窓から、外を覗いて見ました。
けれど、ただ青い青い海の上に月の光りが、はてしなく照らしているばかりでありました。
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