(448字。目安の読了時間:1分)
己の空費された過去は? 己は堪らなくなる。
そういう時、己は、向うの山の頂の巖(いわ)に上り、空谷に向って吼(ほ)える。
この胸を灼く悲しみを誰かに訴えたいのだ。
己は昨夕も、彼処で月に向って咆(ほ)えた。
誰かにこの苦しみが分って貰(もら)えないかと。
しかし、獣どもは己の声を聞いて、唯、懼(おそ)れ、ひれ伏すばかり。
山も樹も月も露も、一匹の虎が怒り狂って、哮(たけ)っているとしか考えない。
天に躍り地に伏して嘆いても、誰一人己の気持を分ってくれる者はない。
ちょうど、人間だった頃、己の傷つき易い内心を誰も理解してくれなかったように。
己の毛皮の濡(ぬ)れたのは、夜露のためばかりではない。
漸く四辺の暗さが薄らいで来た。
木の間を伝って、何処からか、暁角が哀しげに響き始めた。
最早、別れを告げねばならぬ。
酔わねばならぬ時が、(虎に還らねばならぬ時が)近づいたから、と、李徴の声が言った。
だが、お別れする前にもう一つ頼みがある。
\==============================================
ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=259a4494d9&e=c06520986f
■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv
■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp
■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404
■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000119/files/624_14544.html
■運営へのご支援はこちら: https://notsobad.us11.list-manage.com/track/click?u=c71a56a796830e0127965ec03&id=a32dc37587&e=c06520986f
メール配信の停止はこちら:https://goo.gl/forms/kVz3fE9HdDq5iuA03
(これより下部のメッセージはすべてシステムによって自動付与されたもので、現在機能しておりません。必ず上記のURLからご解約ください)
\==============================================
Unsubscribe [email protected] from this list: