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2018-09-30

【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (30/30)

(513字。目安の読了時間:2分) 「オンバラジャア、ユウセイソワカ」私は、鉄の棒を握って、何となく空に祈った。  淋しくなった。  裏側の水上署でカラカラ鈴の鳴る音が聞える。  私は裏側へ廻(まわ)って、水色のペンキ塗りの歪んだ窓へよじ登って下を覗いてみた。  電気が煌々(こうこう)とついていた。 部屋の隅に母が鼠(ねずみ)よりも小さく私の眼に写った。 父が、その母の前で、巡査にぴしぴしビンタを殴られていた。 「さあ、唄うてみんか!」  父は、奇妙な声で、風琴を鳴らしながら、 「二瓶つければ雪の肌」と、唄をうたった。 「もっと大きな声で唄わんかッ!」 「ハッハッ……うどん粉つけて、雪の肌いなりゃア、安かものじゃ」  悲しさがこみあげて来た。 父は闇雲に、巡査に、ビンタをぶたれていた。 「馬鹿たれ! 馬鹿たれ!」  私は猿のように声をあげると、海岸の方へ走って行った。 「まさこヨイ!」と呼ぶ、母の声を聞いたが、私の耳底には、いつまでも何か遠く、歯車のようなものがギリギリ鳴っていた。 (昭和六年四月) ============================================== 底本:「ちくま日本文学全集 林芙美子」筑摩書房    1992(平成4)年12月18日第1刷発行 底本の親本:「現代日本文学大系 69」筑摩書房    1969(昭和44)年 初出:「改造」    1931(昭和6)年4月 入力:土屋隆 校正:林幸雄 2006年9月21日作成 青空文庫作成ファイル: このファイルは、インターネットの図書館、青空文庫(http://www.aozora.gr.jp/)で作られました。入力、校正、制作にあたったのは、ボランティアの皆さんです。 ============================================== ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://goo.gl/6ZxJiY ■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp ■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404 ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000291/files/1814_24391.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail [PR] 読んだ本の内容を、見やすい年表で整理しよう。日本最大の年表作成サービス「THE TIMELINE」 ▼ ▽ ▼ https://the-timeline.jp ============================================== Unsubscribe *|HTML:EMAIL|* from this list: *|UNSUB|*

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