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2018-09-20

【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (20/30)

(544字。目安の読了時間:2分) 「早よう行って来ぬか! 何しよっとか?」  私は、見当もつかない夜更けの町へ出た。 波と風の音がして、町中、腥(なまぐさ)い臭いが流れていた。 小満の季節らしく、三味線の音のようなものが遠くから聞えて来る。  いつから、手を通していたのであろうか、首のところで、釦(ボタン)をとめて、私は父の道化た憲兵の服を着ていた。 そのためだろうか、街角の医者の家を叩くと、俥夫は寝呆けて私がいまだかつて、聞いた事がないほどな丁寧な物言いで、いんぎんに小腰を曲めた。 「よろしうござりますとも、一時でありましょうとも、二時でありましょうとも、医者の役目でござります故、私さえ走るならば、先生も起きましょうし、じき、上りまするでござります」  8 井戸へ墜ちたおばさんは、片手にびしょびしょの風呂敷包みを抱いて上って来た。 その黒い風呂敷包みの中には繻子の鯨帯と、おじさんが船乗り時代に買ったという、ラッコの毛皮の帽子がはいっていた。 おばさんは、夜更けを待って、裏口から質屋へ行く途中ででもあったのであろう。 おばさんの帯の間から質屋の通いがおちた。 母は「このひとも苦労しなはる」と、思ったのか、その通いを、医者の見ぬように隠した。 ============================================== ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://goo.gl/6ZxJiY ■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp ■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404 ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000291/files/1814_24391.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail [PR] 読んだ本の内容を、見やすい年表で整理しよう。日本最大の年表作成サービス「THE TIMELINE」 ▼ ▽ ▼ https://the-timeline.jp ============================================== Unsubscribe *|HTML:EMAIL|* from this list: *|UNSUB|*

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