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2018-09-11

【ブンゴウメール】風琴と魚の町 (11/30)

(565字。目安の読了時間:2分) 私の丼の中には三角の油揚が這入っていた。 「どうしてお父さんのも、おッ母さんのも、狐(きつね)がはいっとらんと?」 「やかましいか! 子供は黙って食うがまし……」  私は一片の油揚を父の丼の中へ投げ入れてニヤッと笑った。 父は甘美そうにそれを食った。 「珍しかとじゃろな、二三日泊って見たらどうかな」 「初め、癈兵じゃろう云いよったが、風琴を鳴らして、ハイカラじゃ云う者もあった」 「ほうな、勇ましか曲をひとつふたつ、聴かしてやるとよかったに……」  私は、残ったうどんの汁に、湯をゆらゆらついで長いこと乳のように吸った。  町には輪のように灯がついた。 市場が近いのか、頭の上に平たい桶(おけ)を乗せた魚売りの女達が、「ばんより! ばんよりはいりゃんせんか」と呼び売りしながら通って行く。 「こりゃ、まあ、面白かところじゃ、汽車で見たりゃ、寺がおそろしく多かったが、漁師も多かもん、薬も売れようたい」 「ほんに、おかしか」  父は、白い銭をたくさん数えて母に渡した。 「のう……章魚の足が食いたかア」 「また、あげんこツ! お父さんな、怒んなさって、風琴ば海さ捨てる云いなはるばい」 「また、何、ぐずっちょるとか!」 ============================================== ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://goo.gl/6ZxJiY ■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp ■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404 ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/000291/files/1814_24391.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail [PR] 忙しいあなたも、耳は意外とヒマしてる!耳で読書できる便利アプリ。好みの一冊があるか、ぜひ調べてみよう! ▼ ▽ ▼ https://goo.gl/xL67HL ============================================== Unsubscribe *|HTML:EMAIL|* from this list: *|UNSUB|*

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