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2018-08-15

【ブンゴウメール】押絵と旅する男 (15/31)

(675字。目安の読了時間:2分) 「殊に、一方の、白髪の老人の身の上話をでございますよ」 「若い時分からのですか」  私も、その晩は、何故か妙に調子はずれな物の云い方をした。 「ハイ、あれが二十五歳の時のお話でございますよ」 「是非うかがいたいものですね」  私は、普通の生きた人間の身の上話をでも催促する様に、ごく何でもないことの様に、老人をうながしたのである。 すると、老人は顔の皺を、さも嬉しそうにゆがめて、「アア、あなたは、やっぱり聞いて下さいますね」と云いながら、さて、次の様な世にも不思議な物語を始めたのであった。 「それはもう、一生涯の大事件ですから、よく記憶して居りますが、明治二十八年の四月の、兄があんなに(と云って彼は押絵の老人を指さした)なりましたのが、二十七日の夕方のことでござりました。当時、私も兄も、まだ部屋住みで、住居は日本橋通三丁目でして、親爺が呉服商を営んで居りましたがね。何でも浅草の十二階が出来て、間もなくのことでございましたよ。だもんですから、兄なんぞは、毎日の様にあの凌雲閣へ昇って喜んでいたものです。と申しますのが、兄は妙に異国物が好きで、新しがり屋でござんしたからね。この遠眼鏡にしろ、やっぱりそれで、兄が外国船の船長の持物だったという奴を、横浜の支那人町の、変てこな道具屋の店先で、めっけて来ましてね。当時にしちゃあ、随分高いお金を払ったと申して居りましたっけ」  老人は「兄が」と云うたびに、まるでそこにその人が坐ってでもいる様に、押絵の老人の方に目をやったり、指さしたりした。 ============================================== ハッシュタグ「#ブンゴウメール」をつけて感想をつぶやこう! https://goo.gl/me2p48 ■Twitterでみんなの感想を見る:https://goo.gl/rgfoDv ■ブンゴウメール公式サイト:https://bungomail.notsobad.jp ■次に読みたい作品を教えてください!:http://blog.notsobad.jp/entry/2018/05/03/145404 ■青空文庫でこの作品を読む:https://www.aozora.gr.jp/cards/001779/files/56645_58203.html ■運営へのご支援はこちら: https://www.buymeacoffee.com/bungomail [PR] Facebookを使って、みんなに知られず婚活ができる神アプリ!毎月4000人以上に恋人ができている実績あり。まずは試してみて! ▼ ▽ ▼ https://goo.gl/kvdRBG ============================================== Unsubscribe *|HTML:EMAIL|* from this list: *|UNSUB|*

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