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2018-06-18

【ブンゴウメール】夢十夜 (18/29)

(727字。目安の読了時間:2分)

 道具箱から鑿(のみ)と金槌を持ち出して、裏へ出て見ると、せん だっての暴風で倒れた樫(かし)を、薪にするつもりで、木挽に挽 (ひ)かせた手頃な奴が、たくさん積んであった。

 自分は一番大きいのを選んで、勢いよく彫り始めて見たが、不幸に して、仁王は見当らなかった。
その次のにも運悪く掘り当てる事ができなかった。
三番目のにも仁王はいなかった。
自分は積んである薪を片っ端から彫って見たが、どれもこれも仁王 を蔵しているのはなかった。
ついに明治の木にはとうてい仁王は埋っていないものだと悟った。
それで運慶が今日まで生きている理由もほぼ解った。

第七夜

 何でも大きな船に乗っている。

 この船が毎日毎夜すこしの絶間なく黒い煙を吐いて浪を切って進ん で行く。
凄じい音である。
けれどもどこへ行くんだか分らない。
ただ波の底から焼火箸のような太陽が出る。
それが高い帆柱の真上まで来てしばらく挂(かか)っているかと思 うと、いつの間にか大きな船を追い越して、先へ行ってしまう。
そうして、しまいには焼火箸のようにじゅっといってまた波の底に 沈んで行く。
そのたんびに蒼(あお)い波が遠くの向うで、蘇枋(すおう)の色 に沸き返る。
すると船は凄じい音を立ててその跡を追かけて行く。
けれども決して追つかない。

 ある時自分は、船の男を捕まえて聞いて見た。

「この船は西へ行くんですか」

 船の男は怪訝な顔をして、しばらく自分を見ていたが、やがて、

「なぜ」と問い返した。

「落ちて行く日を追かけるようだから」

 船の男はからからと笑った。

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