ブンゴウメール公式ブログ

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2021-06-11

二銭銅貨(11/30)

(684字。目安の読了時間:2分) ところで君が詳しいというのなら、も少しあの煙草屋のことを話さないか」 「ウン、話してもいい。爺さんと婆さんとの間に一人の娘がある。俺は一度か二度その娘を見かけたが、そう悪くない容色だぜ。それがなんでも、監獄の差入屋とかへ嫁いているという話だ。その差入屋が相当に暮しているので、その仕送りで、あの不景気な煙草屋も、つぶれないで、どうかこうかやっているのだと、い...

2021-06-10

二銭銅貨(10/30)

(657字。目安の読了時間:2分)  ある日のこと、いい心持に※(ゆだ)って、銭湯から帰って来た私が、傷だらけの、毀れかかった一閑張の机の前に、ドッカと坐った時、一人残っていた松村武が、妙な、一種の興奮した様な顔付を以て、私にこんなことを聞いたのである。 「君、この、僕の机の上に二銭銅貨をのせて置いたのは君だろう。あれは、どこから持って来たのだ」 「アア、俺だよ。さっき煙草を買ったおつりさ...

2021-06-09

二銭銅貨(9/30)

(694字。目安の読了時間:2分) そこで、工場の当の責任者たる支配人は、その金を発見したものには、発見額の一割の賞を懸けるということを発表した。 つまり五千円の懸賞である。  これからお話しようとする、松村武と私自身とに関する、一寸興味のある物語は、この泥坊事件がこういう風に発展している時に起ったことなのである。 中  この話の冒頭にも一寸述べた様に、その頃、松村武と私とは、場末の下...

2021-06-08

二銭銅貨(8/30)

(639字。目安の読了時間:2分) 一寸見ると普通のモーニングだが、実は手品使いの服の様に、附けられる丈けの隠し袋が附いているんです。五万円位の金を隠すのは訳はありません。支那人の手品使いは、大きな、水の這入った丼鉢でさえからだの中へ隠すではありませんか」  さて、この泥坊事件がこれ丈けでおしまいなら、別段の興味もないのであるが、茲に一つ普通の泥坊と違った、妙な点があった。 そして、それが...

2021-06-07

二銭銅貨(7/30)

(709字。目安の読了時間:2分)  ところが愈々最終という日になって、今もお話した様に、偶然にも、飯田橋附近の一軒の旅館の前で、同じ吸殻を発見して、実は、あてずっぽうに、その旅館に探りを入れて見たのであるが、それがなんと僥倖(ぎょうこう)にも、犯人逮捕の端緒となったのである。  そこで、色々、苦心の末、例えば、その旅館に投宿して居った、その煙草の持主が、工場の支配人から聞いた人相とはまるで...

2021-06-06

二銭銅貨(6/30)

(638字。目安の読了時間:2分) というのは、その旅館の前の、下水の蓋を兼ねた、御影石の敷石の上に、余程注意深い人でなければ、眼にとまらない様な、一つの煙草の吸殻が落ちていた。 そして、何んと、それが刑事の探し廻っていた所の埃及煙草と同じものであったのである。  さて、この一つの煙草の吸殻から足がついて、さしもの紳士盗賊も遂に獄裡の人となったのであるが、その煙草の吸殻から盗賊逮捕までの径...

2021-06-05

二銭銅貨(5/30)

(656字。目安の読了時間:2分)  斯様にして、一週間は過ぎたけれども賊は挙がらない。 もう絶望かと思われた。 彼の泥坊が、何か他の罪をでも犯して挙げられるのを待つより外はないかと思われた。 工場の事務所からは、其筋の怠慢を責める様に、毎日毎日警察署へ電話がかかった。 署長は自分の罪ででもある様に頭を悩した。  そうした絶望状態の中に、一人の、同じ署に属する刑事が、市内の煙草屋の店...

2021-06-04

二銭銅貨(4/30)

(643字。目安の読了時間:2分) そこで、警察へ電話をかけるやら、賃銀支払を延す訳には行かぬので、銀行へ改めて二十円札と十円札の準備を頼むやら、大変な騒ぎになったのである。  彼の新聞記者と自称して、お人よしの支配人に無駄な議論をさせた男は、実に、当時新聞が、紳士盗賊という尊称を以て書き立てた所の大泥坊であったのだ。  さて、管轄警察署の司法主任其他が臨検して調べて見ると、手懸りというも...

2021-06-03

二銭銅貨(3/30)

(740字。目安の読了時間:2分)  支配人は、無作法な奴だ位で、別に気にもとめないで、丁度昼食の時間だったので、食堂へと出掛けて行ったが、暫くすると近所の洋食屋から取ったビフテキか何かを頬張っていた所の支配人の前へ、会計主任の男が、顔色を変えて、飛んで来て、報告することには、 「賃銀支払の金がなくなりました。とられました」  と云うのだ。  驚いた支配人が、食事などはその儘(まま)にし...

2021-06-02

二銭銅貨(2/30)

(653字。目安の読了時間:2分) のみならず、新聞記者を相手に、法螺を吹いたり、自分の話が何々氏談などとして、新聞に載せられたりすることは、大人気ないとは思いながら、誰しも悪い気持はしないものである。 社会部記者と称する男は、寧ろ快く支配人の部屋へ請じられた。  大きな鼈甲縁の眼鏡をかけ、美しい口髭をはやし、気の利いた黒のモーニングに、流行の折鞄という扮装のその男は、如何にも物慣れた調子...

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